初夏の森、全身で輝くコアジサイ

雑記

梅雨のころになると、あちこちでアジサイが咲き始めます。

アジサイの花には「装飾花」と「真花(しんか)」があります。

一般的に花びらだと思って見ている大きくて目立つ部分は、実はガクが変化した「装飾花」で、昆虫を呼び寄せる役割を持ちますが、種を作りません。

本当の花は中央にある小さな粒みたいな部分で、これが雄しべや雌しべを持ち、種を残します。

つまり、目を引くのは装飾花ですが、植物として大切な役割を果たしているのは中央の小さな「真花」なのです。

先日、六甲高山植物園へ行ったとき、「コアジサイ」というのがたくさん咲いていました。

「え?これアジサイ?」

と思うほど一見地味な見た目です。

コアジサイは野生のアジサイで、街なかでよく見る西洋アジサイやガクアジサイのような大きな装飾花がなく、とても小さな真花だけが集まって咲いています。

しかしよく見ると茎から小さなお花までが淡い青紫色にうっすら輝いていて、控えめながらとても美しいと感じました。

人間社会にも、「目立つ人」っていますよね。

特に職場でありがちなのが、実務よりも人前での立ち回りが得意で、なんか目立って出世する人です。

彼らは会議の段取りをしたり、偉い人のアテンドをしたり、取引先との飲み会に参加したりします。

またミーティングには必ず出て、ふわっとした発言をし、質問に対してもふわっと答え、部下にふわっとした指示を出します。

つまり何してるって訳ではないけど、「やってる感」出すのは上手い人です。

一方、そのふわっとした指示を具体的に解釈し実行する実務部隊がいます。

実務部隊は目立ちませんが、資料を作成したり、データ入力や集計など数字の管理をしたり、ミスが起きないよう確認作業をしたり、業務に必要な備品類を切らさないように在庫管理したり発注したり…

マルチタスク能力が必要で、ふわっとしていたら進まないので判断力と決断力も必要です。

決して簡単な仕事でもありません。また楽な仕事でもありません。

しかしそれらの「実務」は成果として見えにくく、出来ていて当たり前になり、評価されにくいのです。

アジサイの装飾花にも役割があります。装飾花はその華やかな見た目で昆虫を呼び寄せ、花粉を運んでもらいます。

人間社会の「目立つ人」も同じで、彼らは彼らの強みを活かして戦っているのです。

また彼らは矢面に立ち、人とのやり取りや調整役を引き受けてくれているので、実務部隊は自分の仕事に集中することが出来ます。

誰しも得意なこと、苦手なことがあり、役割分担して組織は成り立っているのです。

問題はトップが目立つものばかり見てしまい、華やかな仕事には拍手が送られるが、その土台を支えている地道な仕事はやってもやっても評価されず、次第に気持ちが腐っていく…。

コアジサイには装飾花がない。全て小さな両性花の集まりです。つまり全員が実務部隊のみの組織です。

派手ではない、その小さな花ひとつひとつがそれぞれに青紫色に輝き、茎までも美しい。

こんな世界もあるんだなあ。

目立つ人や、声の大きい人、アピールが上手い人、主張の激しい人…。

そんなの関係なく、みんなが同じように役割を果たし、同じように輝いている。

そんな世界が人間社会にあるのだろうか。

大きな装飾花を持たないコアジサイがこんなにも輝いて見えるのは、

不条理に慣れてしまった人間が、どこかで憧れている姿だからなのかもしれません。

コアジサイ(小紫陽花)

アジサイ科アジサイ属の落葉低木。日本固有種。花期は6〜7月。
別名、シバアジサイ(柴紫陽花)。
日本の山野に自生するアジサイの仲間。華やかな装飾花はなく、小さな真花が集まって咲く自然な姿が特徴です。控えめながらも繊細で美しく、森の中でひっそりと初夏を告げてくれます。

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